放射冷却で表面温度を外気温よりも下げることが可能な塗料
炭酸カルシウムを用い、商業的に生産されている遮熱塗料よりも太陽光の反射率が高く、放射冷却により直射日光下でも表面温度を外気温よりも下げることが可能なアクリル塗料を米パデュー大学の研究チームが開発したそうだ(パデュー大学のニュース記事、 論文、 ScienceDailyの記事、 動画)。
8~13マイクロメートルの波長領域は「大気の窓(sky window)」とも呼ばれ、大気中でほとんど吸収されずに宇宙へ放出される。放射冷却はこの波長領域の赤外線を放射する物体が冷却される現象だ。放射冷却は外部エネルギーを消費しない冷却技術として長年研究されているが、現在のところ1層のみで日中の表面温度を外気温以下に冷却可能な塗料は商業的に実現していない。
炭酸カルシウムはバンドギャップが大きく紫外線をあまり吸収しないが、屈折率は低い。そのため、研究チームは60%という高濃度で炭酸カルシウムを配合し、粒子を幅広いサイズに分布させることで光の散乱を強めている。これにより、現在商業的に生産されている遮熱塗料の反射率が80~90%程度にとどまるのに対し、炭酸カルシウム・アクリル塗料の反射率は95.5%に達し、太陽の窓で0.94という高い放射率を実現した。なお、高い放射率は炭酸カルシウムではなく、アクリル基剤の貢献が大きいという。
パデュー大学のあるインディアナ州ラファイエットで2018年3月に行った実験では、サンプルの温度が夜間には外気温よりも10℃低く、太陽放射ピーク時でも1.7℃以上低くなったそうだ。また、2018年8月にネバダ州リノで行った実験では夜間の冷却能力が56W/m2、10時から14時の冷却能力が37W/m2だったとのこと。炭酸カルシウムは酸化チタンなどと比べて安価であり、低価格な遮熱塗料が実現できる。また、金属を含まないことから無線通信設備の冷却といった用途での使用も期待される。
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