
EU司法裁判所、「忘れられる権利」による検索結果からの除外はEU加盟国の国別TLDバージョンのみが対象になるとの判決 10
踏み込んだ 部門より
headless曰く、
EU司法裁判所は24日、「忘れられる権利」による検索結果からの除外要請を受けたサーチエンジン運営者は、その人物を全世界の国別TLDバージョンから除外する必要はないが、すべてのEU加盟国の国別TLDバージョンから除外する必要があるとの判断を示した(裁判所文書、プレスリリースPDF、VentureBeat、The Guardian)。
この裁判は、サーチエンジン運営会社が自然人による検索結果からの除外要請を受諾した場合、全世界の国別TLDバージョンから除外する必要があるとのフランス・情報処理と自由に関する国家委員会(CNIL)による決定にGoogleが従わず、10万ユーロの罰金を科されたことを不服としてフランスの行政最高裁判所にあたる国務院に訴えたことから、国務院がEUおよびフランスの法令をどう解釈するか事前判決をEU司法裁判所に求めていたものだ。GoogleはEU加盟国の国別TLDバージョンでのみ除外処理を行っており、IPアドレスによるジオブロッキングによる対策も提案していたが、CNILは対策が不十分だと判断していた。
EU司法裁判所では、忘れられる権利が絶対的な権利ではなく、他の基本的人権とのバランスを取って適用されるべきだとし、EUの法規は除外要請を受諾した場合に全世界のTLDから除外することを禁じてはいないものの、必ずしも除外が義務付けられているわけではないと判断。一方、EU加盟国の国別TLDバージョンのサーチエンジンからはすべて除外する必要があると判断している。ジオブロッキングについては、EU加盟国内のユーザーが検索結果から除外された人物の名前をEU域外バージョンのサーチエンジンで検索するのを妨げる措置が最低限必要だとも判断している。
本件に関しては1月、EU法務官が同様の意見を示していた。EU司法裁判所の判断はEU法務官の意見と一致することが多いものの、ハイパーリンクを張る行為が著作権侵害にあたるかどうかについては意見が分かれていた。
日本への影響 (スコア:1)
インターネットには国境がないとはいえ当然の帰結。
ところで、EU法はEU圏向けサービスにしか適用されないことが明確化されると日本国内で困る人がいますね。「EU圏からのアクセスがあるWebサイトはGDPR対応が必要」と嘯いてきたITコンサルとか。
明らかに日本向けのサービスしか展開していないWebサイトでも、GDPRの個人情報取得同意ダイアログが表示されるのは、そういう人たちが頑張って営業したおかげなんですよね。いや、もちろんGDPRの主旨に賛同して(法的な義務がなくとも)自主的に同意を取得しようというのなら素晴らしい心掛けですが。
一方、ジオブロッキングに関する判断は精査する必要がありそうですね。GDPR対応においても「必要なければEU圏からのアクセスをジオブロッキングしましょう」といったアドバイスが幅を利かせているわけですが、IPジオロケーション判定というのは技術的な緩和策に過ぎず、誤判定の可能性がある(今月NURO光の件 [it.srad.jp]が話題になったばかりですね)ので、法的な判断とは分けて考えるべきだと思うのですが……極論、国内外のあらゆるサービスでEU法に対応するためのジオブロッキングが必要ということにならないでしょうか。
Re:日本への影響 (スコア:2)
この判断は、サーチエンジンと「忘れられる権利」のかねあいに対するもんやろ。
それ以外がどうなるかはわからないままなら、GDPRによるリスクはほとんど下がっていないので、結局は、対策しておいたほうが安心。
Googleだからこそ、先方はクレームしたし、Googleは従わなかったし、先方は罰課金したし、Googleは裁判に訴えたし、最後は先方のクレームも罰課金も無効になった。
並の企業は、ここまでガチの対応ができるか?裁判以前に、海外からクレームが来ただけでもイヤなんじゃないか?