風力発電タービンの3枚あるブレードの1枚を黒く塗ることで鳥の衝突死を大幅に減らすことができるとの研究結果 66
色って重要 部門より
Norwegian Institute for Nature Research(NINA)の研究チームがノルウェー・スメラ島の風力発電所で行った実験によれば、風力発電タービンのブレード(羽根)3枚のうち1枚を黒く塗ることで鳥の衝突死が大幅に減少したそうだ(NINAのニュース記事、 Ars Technicaの記事、 論文)。
高速で回転するブレードはモーションスミアにより透き通って見える。そのため、ブレードに着色してモーションスミアを減少させることで鳥が衝突しにくいようになるという実験室での実験に基づく研究成果が2003年に発表(PDF)されており、特にブレードの1枚のみを黒く着色する方法が推奨されていた。研究チームは2013年8月に発電所や地元自治体、規制当局の許可を得てタービン4基を処理群としてブレード各1枚を黒く塗り、別の4基を対照群として2016年末まで調査を実施。この風力発電所では2006年から鳥の衝突死に関する調査が行われており、その結果と合わせてbefore-after-control-impact(BACI)評価を行った。
その結果、処理群では対照群の4基と比べて鳥の衝突死が70%以上減少したという。特に猛禽類に対する効果が高く、オジロワシの衝突死は0となっている。ブレードが黒く塗られたタービンを回避することで他のタービンへの衝突が増えたという兆候はみられないとのこと。この研究ではタワー部分への衝突が多いライチョウを除外しているが、並行して行われた別の研究ではタワーを黒く塗ることでライチョウの衝突死が48%減少したとの結果が出ている。
風力発電では鳥類やコウモリなど空を飛ぶ動物の衝突死が問題になっており、さまざまな対策が考案されている。しかし、発電所の大幅な収入減や支出増につながらない効果的な対策は少ない。ブレード着色を稼働中の風力発電タービンに適用するには大きなリソースを要するが、設置前の段階で適用すれば低コストで効果的な対策となる。研究チームではブレード着色の効果を一般化可能にするため、再現実験の繰り返しを推奨している。